総義歯患者さん達を救わねば、しかし、そこには矛盾が

75歳以上の人口の男性の4分の1、女性の3分の1が総義歯患者さんだそうです。

この数字は、日本が大変な時代に直面して来ている事を示唆していて衝撃的です。

今介護の現場は大変な事態になっています。

マンパワー不足で、遺棄老人が今後激増する事が予測されます。

年齢差から考えると、75歳以上の高齢者をお世話するのは還暦前後の方々でしょう。

子育てが終了して、孫を見たい世代が、親の世代を見ないといけない、老々介護、体力の限界に挑まねばならない事態が迫って来ているのです。

そして、最も恐ろしいのは、そうして高齢者のお世話に明け暮れた方々が、自分の体を手入れする時間も無く、お世話した方々を見送った後自分が後を追う事態に到ってしまう事で、今度はそれをお世話できる人口、世代が絶対的にに不足する事が予測される事です。

これは日本自体が負のスパイラルに陥っている、出生率の落ち込みによる支える人口不足の招く、危機だと言えるでしょう。


これを根本的に変えるには、高齢者の自立、自分の事は自分で出来る人口の増やす以外に道はない、と私は思います。

その第1歩として、我々歯科医が出来る事は、総義歯であろうともチャンと噛めて、機能回復をさせられ、生き生きと人生を楽しめる方を増やすのがベストだと言いたいのです。

はっきり言って、インプラントは高額過ぎます。

インプラント治療等は、沢山の患者さんが受けられる治療では全くありません。


しかし、保険診療では、総義歯1組治療しても7万程度の収入しかありません。

しかも、ここから材料代、技工料も支払わなければならないのです。

これでは、粗製濫造に陥ってしまいかねません。

なので、私は少なくとも3倍の収入が得られるよう、20万に改善していただくか、患者さんに自費でお支払いいただくしかないと思います。


これでも高齢者にとってはとてつもなく大変かも知れませんが、非常に残念ながら歯科医も生活していかなければいけません。

保険の点数では、全くの赤字、持ち出しに成ってしまうでしょう。


保険治療は、キチンとした治療をしようとすればするほど、持ち出しが多くなり、ひたすら数をこなして薄利多売するしかなくなるのです。

しかし、これでは質が保証されません。


眼鏡一つにべっ甲とか使って、10万以上ものをしている高齢者も沢山います。

眼鏡屋さんは、見事です。

レンズさえ合っていれば、1万以下のもので十分に見える筈。

なのに、見栄えの部分で、その方に相応しいものでと薦めて入歯より高額な眼鏡をかけさせているのですから。

勿論、見える事、外観上の見栄え凄く重要でしょうからべっ甲の眼鏡には凄く価値があるのでしょう。

しかし、では何故噛める事、気持ち良く話せる事へは価値観を見出していただけないのでしょうか?

大きな矛盾をそこに感じて仕方がありません。

高齢者にとって、いよいよとなって来た時、動けない状態に陥った時の生きる意欲の源、生き甲斐は食べる事、話せる事です。

そして、その時になって慌てても遅過ぎるのです。

この事実を、皆さんは感じていなさ過ぎます。

間に合わない事の悲劇が、今後恐ろしい勢いで増えて行く事が私は怖い。

特に団塊の世代が、総義歯患者さんになってしまった時どうするのか?です。

今活躍されている名人の先生方も、団塊以上の年齢であられれば存命であるか厳しくなるでしょう。

その喪失を、我々以下の世代は歯科医達は支えられるのか?


全国に開業医は7万軒以上ある、多過ぎるなんてのは全くの嘘です。

近い将来訪れる歯科界を襲う危機は、今の規模で持ってしても全く足りていない、増してや総義歯治療をチャンと請け負える先生ともなれば稀少種化する危機すら孕んでいる、と危惧します。

保険点数の過小評価、患者さん達への価値観の正しい理解の不足、実力のない歯科医達の増加、あらゆる可能性を見ていて、怖いと感じられて仕方がありません。


その時、我々の業界は存在価値なし、と見做されてしまうのでは、と鳥肌が立つくらい怖いです。


若い世代の方ほど、この危機感を肌で感じて欲しい。

患者さんの方が、ヒシヒシと感じ始めているのか、将来入歯にならないようにとインプラントをされる方が増えて来ています。

なので、確かに、時間が経てば総義歯患者さんはある時から一気に減るでしょう。

しかし、それまでは怖ろしいほどの沢山の患者さん達が、遺棄されてしまう可能性が高い、と言わざるを得ません。

今現状で求められているのは、総義歯治療の出来る歯科医群の誕生に他ならないでしょう。

私はそう確信します。


なので、今こそ、日本最大規模のスタディグループの指導者達は、総義歯治療推進を行うべきです。

インプラントや審美、歯周病治療と平行して、総義歯治療を若い世代へ伝授する役目を果たしていただきたい。

そして、総義歯1組20万以上は真っ当な費用なんだ、と一般社会への浸透を目指していただきたい。

自立高齢者を増やし、支える世代の疲弊を予防して、広く国民を救う為、国を根本から救う為。

私の主張は間違っていますか?