インプラント即時荷重治療の患者様を偲ぶ

昨日の診療終了間際、患者様から緊急の電話が入った。
○川○夫さんの奥様からだった。
御主人様が、27日くも膜下出血で急死された、との連絡であった。
一瞬で血の気が引いた。
エッ、まさかと言う感じだった。
まだ、73歳で24日にもメインテナンスで来院されていて、お元気そうだったからだ。
そんな馬鹿な、嘘であって欲しいと思った。
急いで、治療中の手を止めて、電話を変わった。
奥様が、先生本当にお世話に成りました。主人を荼毘に伏した所、ちゃんとインプラントが入っていて、流石だなと思いました、とお礼を述べられて下さった。
私は、上の空で頭に中がグルグルして、とんでもありません、本当に立派な方で、惜しい方を亡くしました。ご愁傷さまです、と型通りの挨拶しか出来なかった。
スタッフも茫然としていた。
あの○川さんが、本当に亡くなったんだと言う事実が、信じられず、死んでしまったんだ、と互いに話し、確認する有様であった。
走馬灯のように、思い出が駆け抜けていった。

○川さんは、父の紹介で当院に来られた。
人格者であり、父とは違う青二才の私の腕を信じ、全てを任せて下さった。
下顎の両奥歯を、即時荷重で治療させて頂き、上顎は金属床の総入歯で治療を終了出来た。
治療期間は半年未満であった。
まさに即時の効果を、体感されてオペしたすぐ後から、上顎の総入歯が安定し、インプラントは凄いとお褒め下さっていた。
そのお陰で、奥様も治療させて頂いた。

今にして思えば、早く治せて本当に良かったと言う事である。
私は、奥様にインプラント等をそのまま入れて差し上げて下さい、あの世で噛めないと不自由でしょうから、と話させて頂いた。
奥様も、えぇそうさせて頂きました。さすがにインプラントはしっかり入ってました。ありがとうございました。と繰り返された。

即時荷重という業を振るい、患者様に治療させて頂けて良かったと思う。
○川さんの本当に噛める様になりましたと、心から喜んでおられた顔が、目の前に浮かんだ。
通常の治療では、1〜2年かかり噛める実感を楽しむ時間が少なかったであろう。
即時の成せる、早く確実に治せる効果を、ヒシヒシと感じさせられた。
やはり患者様を、早く機能回復させて差し上げる治療は、大変有意義なのである。
私は、この方法をもっともっと極め、より早くより確実により綺麗に治して差し上げ、沢山の患者様に貢献する事を、故人の魂に誓う。

寄寓にも○川さんは、戦後ドイツに行かれた事があり、なんとかのフルトヴェングラーの実演生演奏を聞かれた事がある、多分日本人の中では数名しか居られない方のお一人であった。
フルトヴェングラーは20世紀最高の指揮者で、神がかった空前絶後の指揮者と言われた偉大な指揮者だ。
カラヤンの前のベルリンフィル音楽監督であった方だ。
私は、フルヴェンファン25年で、本当に嬉しかった。
生きていたフルトヴェングラーを聴いて見た方と、お話が出来るなんて考えもしなかった。
自分とフルヴェンが、同じ世界を繋がり生きているのだと言う実感を味わえたのだ。
○川さんのお話では、晩年のフルトヴェングラーで、クラッシックを余り嗜まれないとの事で、そんな凄い指揮者だったのかと思われたそうだ。
私が物凄く感動していると、微笑まれて先生は色んな事に造詣が深いんですね、と感心されていた。
全てが懐かしく思い起こされる。

残された我々の務めを、これからも果たして行く事に、全力であたろう、命ある限り使命を果たそうと、決意を新たにしたのであった。

素晴しいお人柄、お教え頂く事がとてもとても多く、残念で成りません。
○川さん、安らかに安心してお休み下さい。合掌


今回は、衝撃が余りにも大きかった出来事であった為、故人を偲び綴らせていただきました。
個人的な事に、使わせて頂き失礼しました。ご了承下さい。